月刊Webマガジン「ア・ハウス・オブ・コラージ」は、東京家づくり工務店の会イコールパートナー工務店の提供でお送りいたします。購読は無料です。東京家づくり工務店の会

ア・ハウス・オブ・コラージのサポーター各社は「東日本大震災」の義援金活動(日本赤十字社)に協力しております。

Backnumbers  
ア・ハウス・オブ・コラージの発行をお知らせします。メールマガジン「TO-IZニュース」>>詳しくはこちら
新世代エネルギーに乗ろう! 最新OMソーラー住宅の実力 住宅の電力消費を減らすため、太陽エネルギーが注目されています。住宅における太陽エネルギーの利用法は、大きく分けて2種類あります。ひとつは太陽光発電パネルなどを利用して発電する「アクティブソーラー」。もうひとつは太陽の熱をそのまま暖房などに活かす「パッシブソーラー」です。その代表として全国に普及しているOMソーラー住宅を訪ね、その住み心地や効果を取材しました。 一件目に訪ねたSさん宅は、昨年10月に完成した最新のOMソーラー住宅です。 ロムクンのお気に入り Sさん宅を建てた創建舎の中里一雄社長、現場監督・橘(たちばな) 泰一さん、設計スタッフの吉田 薫さんと共に伺いました。ダイニングの吹き抜けに立っている黄色いポールは、OMソーラーにとって大切な設備である「立ち下がりダクト」です。OMソーラーは、屋根に集めた熱をこのダクトで床下に運び、床下のコンクリート基礎に蓄熱します(詳しくはOMソーラーのホームページへ)ダクトの側が温かいのか、愛犬ロムクンの「ハウス」になっていました。 自然を身近に感じるようになりました Sさん宅には、貯湯機能のついた最新型OMソーラーが導入されています。新型カラー液晶モニタには、屋根に集まった熱の温度や室温、外気温、湯温などが分かりやすく表示され、効果を「見える化」しています。現場監督の橘さんにひと冬を過ごした感想を伝えるSさん。「OMソーラーの仕組みは、家が建つまでよく理解していなかった」とのこと。今は毎日のようにモニターを見て、天候と室温の関係などをチェックしながら「自然の変化を身近に感じるようになった」そうです。 多機能に進化するOMソーラー 屋根裏の「ハンドリングボックス」を拝見しました。屋根の熱は「棟ダクト」に集まり、ハンドリングボックス内のファンによって「立ち下りダクト」へ送られます。ファンは専用の太陽電池で稼動させているため、電気代もほとんど掛らないそうです。赤い配管は貯湯槽へつながっていて、不凍液で熱を循環し水を温めます。これから初夏から秋にかけては、温かい空気を外に逃がしながら30〜50℃のお湯を1日約300リットルつくるそうです。住宅の消費エネルギーで多くを占める、お湯に掛るエネルギーをだいぶ節約できます。 【 「OMを難しく考えず、何かを削ってもできるだけ採用することをおすすめします」とSさん。床暖房では難しいパインの天然木床材もOMなら大丈夫です 】 数字で見られるOMの効果 最新の液晶モニタは、USBメモリによってデータをダウンロード出来るようになりました。データには毎日の集熱温度、外気温、室内温度などが記録されています。上のグラフはSさん宅にて計測された今年2月のデータです。屋根に集められた熱は最高50℃前後、室温は最高20℃前後に保たれていることが分かります。ちなみに2月11日の天候は雪で、集熱温度(青い線)が急に下がっています。しかし床下に熱が貯められているので室温に変化は見られません。ただし雨や曇が数日続くと、室温も下がっていくそうです。 電気自動車と住宅の深い仲 電気自動車「日産リーフ」に乗って次の建設現場へ向かいました。創建舎社長の中里さんがリーフに乗り換えた目的のひとつは「電気自動車と住宅の関わりを検証するため」です。例えば、夏場の電力消費のピークを緩和する手段として、電気自動車のバッテリーを家庭用蓄電池として兼用することが期待されています。また排気ガスをださないため、住宅内部を車庫とすることも可能で、オーディオなどの機能を室内で利用する試みもされています。電気自動車は住宅と切り離せない「設備」になるかもしれません。 都市型住宅のモデルハウス 現場監督の橘さんが取り出したのは、創建舎の発行する小冊子「住まいの手帖」です。「周辺の方々にも手にとって欲しい」とのことで、現場のポストに置いています。この住宅は創建舎のモデルハウス(兼・中里邸)として建設され「都市中心部の狭小地で、豊かな暮らしを創造するための工夫」を随所に取り入れているそうです。橘さんから、そのポイントを解説してもらいました。 POINT 1 地下室 ポイントの1番目は地下室です。この地域は「第一種低層住居専用地域」のため、容積率などの制限が厳しく、三階建て住宅を建てるのはほぼ無理です。そこで注目したのが地下室でした。 部屋の広さだけでなく、地下室には夏場のエネルギー消費を抑える効果もあります。地下の温度変化は、地上にくらべ数カ月〜半年遅れます。つまり夏場の時期は冬の気温に、冬場の時期は夏の気温とほぼ同等に保たれます。 昔の農家はこの特性を活かして、地面を深く掘って野菜の貯蔵に利用してきました。今は地下室を寝室などにすることで、夏場のエアコンを出来るだけ使わずに過ごせます。夏場の電気利用のピークは午後2時〜4時頃といわれ、家庭やオフィスのエアコン使用量が大きく関わっています。もし地下室の利用などでエアコンの使用量を抑えられれば、夏場のピークを抑え、近い将来に発電所を減らすことも可能になるでしょう。またこの地下室では、冷風・温風をエアコンによって床下に送り込む、省エネ型の冷暖房システムを試みるそうです。 【 狭小住宅では作業スペースを確保するのも一苦労です。厳しい作業環境の中で、最大限のクオリティを引き出す努力が欠かせません 】 POINT 2 近隣との信頼関係 「地下室を作る上で欠かせないのは、近隣の方々への説明」と橘さん。都市部で地下室を掘る際は、隣地の地盤に影響を与える可能性もあるため、鉄板などできちんとした土止めを行いながら慎重に工事を進めます。しかし近隣への挨拶や工事説明を怠ると不安感を持たれることも。工事前にきちんとした説明を行い、信頼関係を築くことが大切といいます。「ここに暮らす人がよい近隣関係を築けるかどうか、まずは私たちの仕事ぶりにかかっています」と橘さん。 【 天井や壁に隠れてしまう沢山の配管・配線。仕上げの前にこれらをチェックしてデジカメの記録に残しておくのも、現場監督の大切な仕事です 】 POINT 3 コストバランス この住宅も「OMソーラー」を採用し、暖房にかかるエネルギーを大幅に削減できる見込みです。住宅の建設にある程度のコストを掛けることで、冷暖房費などを抑えながら、快適な生活を長くサポートする家をつくれます。しかし都市部の場合、土地代に予算の大半を取られてしまうことも。そこで創建舎では、土地さがしから家づくりをサポートするシステムに力を入れていくそうです。第一種低層住居専用地域の狭小地など、都心でも比較的手頃な価格で購入できる土地をさがし、家づくりに適正なコストを掛けることで「豊かな暮らしの創造」という、家づくり本来の目標を達成していきたいといいます。 【 軒先から吸込まれた空気が屋根の中を通り太陽光で温められます。家づくり現場を守る橘さんは、今日も沢山の現場を巡っています 】 創建舎 参創ハウテック 田中工務店 岡庭建設 東京家づくり工務店の会